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鍛錬されたアスリートは筋肉の増強と脂肪の減少を同時に行うことはできるのか

  • 執筆者の写真: NAOKI TAMURA
    NAOKI TAMURA
  • 2024年7月6日
  • 読了時間: 6分

筋肉を増やしながら脂肪を減少させる。俗に言う「クリーンバルク」であったりしますが、クリーンバルクは脂肪の増加を意味することもありますので、ここでは身体組成の改善と表記するようにします。


上級者にも身体組成の改善は可能か

よくある話が、筋トレ初心者であれば筋肉の増加の幅が大きく、また普段使っていなかったエネルギーを使うことになるので、筋肉は増加し、脂肪は減少すると言われています。

そして上級者(鍛錬されたアスリート)になるほど、筋肉の上昇幅は小さく、同時に達成することは困難であるとされています。


こちらの結論としては

  • 「ボディメイク系競技者の場合は同時の達成は難しいが、栄養、トレーニング、睡眠などの要素を調整することで筋肉の維持または減少を抑えることができる」

  • 「鍛錬されたアスリートであっても、低カロリー環境でなければ栄養などを調整することで、身体組成の改善は可能」 であるとされています。


トレーニングの影響を調べた研究

鍛錬されたという言葉にも幅はありますが、今回の先行研究では等尺性スクワットで自重の2倍の力を発揮できる被験者でした。

この被験者に高強度のレジスタンスサーキットトレーニングを行った群と、伝統的なストレングストレーニング(普通の筋トレ)を行った群で比べたところ、どちらも筋肥大効果はあったとされ、脂肪の減少はサーキットトレーニング群の方が有意に減少したとされています。

実際、無酸素運動よりも、有酸素を含むような同時トレーニングが脂肪の減少には効果的であることから、この結果は予想通りというものですね。


現場への応用としては、スポーツ系アスリートであれば、過体重気味の選手に対し、トレーニングとサーキット的なグリコーゲンを多く使う解糖系のトレーニングプログラムを処方するといいかもしれません。

ただ、ボディメイク系の選手は脂肪の減少に加え、筋肥大の最大化を必要とするため、少し考える必要がありそうです。


栄養面、カロリー不足にするべきか

一般には体脂肪を減らす場合はカロリー不足となるように、筋量を増加させる場合はカロリー余剰となるように処方します。しかし、この方法が適切であるかは長年議論され、この方法に疑いを持つエビデンスもいくつか存在します。


現にカロリー余剰状態において、徐脂肪体重(筋肉)が有意に増加し、体脂肪量が減少することを示すデータが存在します。

また、筋量の増加に関しても、低カロリー状態に関する研究で大きな身体組成の改善が報告されたというものがあります。


研究はあくまで研究ですので、体の中に元々ある貯蓄エネルギーのことや、トレーニング自体のエネルギー消費の正確な測定など、観測が難しい要素が数多くあることは抑えておかなければなりません。

その事情を踏まえた上で、高タンパクでのカロリー余剰(+500kcl)は身体組成を改善するのに良いかもしれません。


超高タンパク質食(3.4g/kg)と通常タンパク質食(2.3g/kg)を比べた研究では、超高タンパク質食の方が、500kcal多かったのに体脂肪の減少が大きかったとされています。

(8週間で-1.6kgと−0.3kg)


別の研究ではホエイプロテインの効果を調べるために、トレ後にマルトデキストリンだけを摂る群とホエイプロテインだけを摂る群に分けて調べたものがあります。(食事は同じものを)

すると、体脂肪量の有意な減少を示したのはホエイプロテインを摂取させた群のみであったとされています。

この研究でわかるのは、食事でのバランスが同じ場合、トレ後に摂取する栄養において身体組成の改善が変わるのではないかということです。

現在ではゴールデンタイムはそれほど重要ではないと言われることもありますが、筋肥大ではなく、体脂肪量の減少を目的とする場合、トレーニング後はホエイタンパクの摂取が効果的かもしれません。

ただ、この研究で気をつけるべきなのは、鍛錬されたアスリートが極度に多量の漸進的トレーニングを実施したということですので、初心者には当てはまらないかもしれません。

ホエイを摂るというより筋グリコーゲンの枯渇状態で糖質を摂取しないことが体脂肪の減少に関わったのかもとも思いますが、ホエイを摂ることでよりエネルギー消費が促進されたとも考えられますので、どちらにせよ多量のトレーニングをした後にはプロテインを摂取するのがいいでしょう。


トレーニングと栄養以外の因子

身体組成の改善にはトレーニング以外の因子も考えられます。

ホルモン、代謝率、睡眠などが考えられますが、それらを対象とした研究はどんなものだったのでしょうか。


睡眠を制限してみた研究では、制限(週5、1時間減少)と制限していない群で不足カロリーが同じであれば、体重減少は同じであったとされています。

しかしながら、減少したものが脂肪か筋肉かというところで違いがありました。

睡眠不足の方は足りている群に比べ、筋肉の減少が大きかったそうです。

原因は何かわかりませんが、コルチゾールやグレリンなどのホルモンが関係していると思われます。

この研究ではレジスタンストレーニングは実施していませんでしたので、完全に当てはまるわけではありませんが、睡眠は身体組成の減少の種類に影響するという参考にはなると思います。

また、トレーナーとしては睡眠不足の人ほどグレリン(飢餓ホルモン)の増加が大きかったとされることから、一般の方へのダイエット指導などで睡眠を見る必要があることがわかります。


睡眠不足はパフォーマンスにも影響するため、日々のトレーニングのボリュームが下がる可能性もあります。

ボリュームが下がると筋肥大を起こす刺激が減りますので、ボディメイク系の選手であれば筋肉の削れる量が増えるかもしれません。


また、血清テストステロンと除脂肪体重の減少には関係性があります。


ボディメイク系アスリートの準備期では、血清テストステロンの数値が下がります。そのため、血清テストステロンの低下をなるべく抑えたいのですが、睡眠不足はこれに対し負の影響を与えることが考えられるため、やはり睡眠の質は高くあるべきでしょう。

筋量の増加に関しても、睡眠教育を受けた群が有意に筋量が増加したという別の研究もあることから、減量にも増量にも睡眠は足りている方がいいということです。


まとめ

以上のことを、鍛錬されたアスリート向けに推奨基準を作るとこんな感じです。


  • 週に3セッション以上、漸進的なトレーニングプログラムを実施する。

  • プログラムの進捗を観察し、パフォーマンスと回復に注意を払って、トレーニングを適切に調整する。

  • 除脂肪体重1kgにつき2.6〜3.5gのタンパク質を摂取することによって、身体組成の改善が発生する可能性や程度を高めることができる。

  • タンパク質の補給は、毎日の食事からのタンパク質を増加させる手段として利用できる。また、筋タンパク質合成を最大化する手段としても利用できる。身体組成の改善を最大化する手段としては、ワークアウト後の補給が有効であるとみられる。

  • パフォーマンス、回復。身体組成の改善に大きな影響を及ぼす因子として、睡眠の質と量も重視するべきである。


今回は鍛錬されたアスリート(上級者)が身体組成の改善ができるのかということについて書いていきました。

専門性が高くなるほど、更に要素が複雑になると思います。

現在のご自身の目標などと照らし合わせて今回の話が参考になると幸いです。



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