高校野球のトレーニングを考える
- NAOKI TAMURA
- 2022年4月9日
- 読了時間: 8分
更新日:2022年4月23日
先日、ジムに高校球児が訪ねてきたので、久し振りに高校野球のトレーニングについて色々考えていこうと思います。
内容は書きながら書いていることが多いので、文章が長くなるとは思いますがね。

僕も高校野球をガチでしていた身ですから、どうしても記事が熱くなりますが、その辺はご了承ください。
そもそも僕がトレーナーをしている理由の一つに「愛媛の高校野球をよくしたい」「松山商業高校を全国制覇させたい」というものがあります。
完全に個人的な理由ですが、正直これが僕の中で結構な割合をしめています。もちろん、松山商業が優勝したなら、他の高校にもいけたらいいなと思います。これだけ言うと「なんや上からやな」という感じですが、僕もちょっとそういうところあるので、、、
高校野球のトレーニング:勝利に向けられているか
高校野球に限らず、部活のトレーニングや練習など、スポーツである以上、その目的は「勝つこと」です。
ここが「スポーツトレーニング」というものを難しくしているところなのですが、相手のいる目的というものは完全な正解があるとは言えず、どちらかというと「こっちのほうがいいんじゃない?」というものの繰り返しであったりします。
ボディメイクや整体の人がトレーナーとして入り、体幹トレーニングや身体を使えるようにモビリティトレーニングを行うのはもちろん間違っていないしいいことだと思います。
ですが大会で戦う相手の高校はその先を言っている可能性がある。
「筋トレ絶対否定派」のトレーナーが指導をしていると、そのチームの筋力は相手チームより低いのは想像に難しくありません。
高校球児が筋トレをしないでいい理由というのはいっぱいあります。それは屁理屈も使えばいくらでも言えます。ただ、正直なところ、筋力のないチームより筋力のあるチームの方が勝つ確率は高いのは論文など引っ張ってこなくてもわかるでしょう。
あとちゃんと筋トレをすればパフォーマンスは向上するため、デメリットよりもメリットのほうが大きいです。かけそうならそのあたりも書きますね。
さて、そろそろ内容に入りますか。
まずは田舎の部活の悪いところですが、監督やコーチ、トレーナーの質が悪いです。角が立つ言い方ですが、悪いものは悪いです。
僕が高校球児のときも今思えば最悪でしたね。
雇うならおすすめは「CSCS」の資格を持っているトレーナーか、めちゃくちゃ好きでトレーナーやっている人がおすすめです。
ボディメイクや通常のジムで働いているトレーナーは「筋トレは教えられるがパフォーマンスにつなげられない」「持久的トレーニングの説明ができない(筋トレしかみれない)」という欠点があります。(口悪くてすみません)
それは仕方ないです。それを普段仕事で考えないですから普通は。
だからメジャーでもチームにCSCSのトレーナーは絶対一人は必要と言われています。
ちなみにCSCSとは「ストレングス&コンディショニングスペシャリスト」です。
筋トレ:速度まで考えられているか
「筋トレがなんで必要ですか」という質問は多いです。
この手の質問は理論を理解すればおのずとなくなるのですが、その場の3分以内で説明するなら「高校球児のスクワットの平均値は120kg、ベンチは70kg、クリーンは知らないが80kgあればそれは強豪高」と説明しています。
相手はそんな身体能力を持つ集団、それも優勝を目指すなら平均以上であることはわかるでしょう。
50メートルは6秒台前半でしょうし、野手の球速で120km/hは容易いでしょう。
それらが「わかっているのか」ということがまず大前提です。
では平均を超えるために、どのような筋トレが必要なのでしょうか。
それは「高い筋力を素早い速度で発揮できるようになる筋トレ」です。
パワーとは「力×速度」です。
スイングスピードが速くてバットが1kgならホームランは打てます。
そういえばカウンセリングに来た球児は速筋と遅筋をしりませんでした。
これも課題ですね。
話を戻しますが、通常の筋トレは「筋肉を大きくする、筋力を高める」ことが目的であると思います。
僕のときも、週3回の脚、胸、背中のトレーニングを行っていました。10回3セットを基本とした単純分割法です。これはいいですよ、まさに「基礎トレーニング」ですね。
とくに1年生はこれをしたいです。
問題は「いかにパフォーマンスにつなげるか」。
普通のトレーナーならたぶん「MAXの筋力の30%で速度と筋力が最大になる」という理論を使って説明してくれるでしょう。それすらないのは残念です。
実際、僕もスイングスピードやジャンプ力、球速は若干あがりました。
でも悪かったところは「プレシーズンになっても10回3セットであったこと」です。
MAXの筋力が上がるとパフォーマンスは上がるのか。一応イエスです。
しかし、100%イエスとは言えないのは、選手もなんとなく理解できると思います。
MAXの筋力があがっただけで50m走は1秒速くなったりしないですからね。
欲しいのは「そのMAXの力を素早い速度で出すことができるか」です。
プレシーズン(試合の2か月前くらい)はオフシーズンで培った筋力に速度をつけるトレーニングをした方がいいです。
それは10回3セットではなく、速度が落ちない範囲で、なるべく素早く6回3セットとか5セットとかをしたいです。
もしくはプライオメトリクスドリル、トレーニングですね。
筋肥大、筋力、パワーのどれを鍛えるかでトレーニングプログラムは大きく変わります。
トレーナーに「これは3つのうちどれを鍛えているのですか」と質問するといいでしょう。答えられないトレーナーなら調べてきてもらいましょう。選手が監督やコーチを育てることも必要かもしれません。
ランメニュー:何を鍛えているのか
筋トレについてもっと書いていたいですが、ランメニューに移ります。
ランメニューの話をする前に、野球という競技をもう一度おさらいしましょう。
野球はほとんどがベンチで過ごします。え?投手は常に投げているじゃないか?
その通りです。しかも8~10割で投げまくっています。
さて、このようなことから言えることは、「間欠的無酸素運動」であるということです。
別に文字を難しくしようとか考えていませんよ。
要は、間を挟む無酸素的な運動ということです。
試合はキャッチボールじゃないということです。
さあ、ランメニューの話をしますが、野球に持久力は必要でしょうか?
嫌な質問ですね。
答えは「場合による」です。
便利な言葉です。
運動は無酸素ですので、どちらか一方をとれと言われれば持久力は必要ないです。
そんな屁理屈を言いたいのではなくて、、、
「野球をうまくなる上で最低限の持久力は必要」ということです。
持久力があがると、回復力があがります。何よりもこれが一番の恩恵です。
ランメニューの意味を「根性つけるため」なんてのはもう冗談にしか聞こえませんが、「練習に耐えるため」というコーチがいます。
バテバテな状態でノックしないでください、質が落ちます。
ランメニューには恨みがありますので愚痴が多かったですかね。
ランメニューは短距離と長距離がありますが、厳密には「10秒以内」か「1分以内」か「それ以上」です。
試合を想定した練習、パワーや走力を鍛えるには10秒以内か多くても1分以内のランメニューが適しています。
それ以上時間のかかるランメニュー(900メートル走とか)は理論上「乳酸性作業閾値」というものを鍛えていますが、それは週に1回、もしくは月に2回くらいでいいと僕は考えています。
持久力がそのまま競技に関係するスポーツ選手であればもっと多く取り入れますが、野球の場合は「無酸素運動ばかりだと毛細血管とかミトコンドリアの働きが低下するおそれがあるからたまには有酸素運動も取り入れよう」くらいの感覚でいいかと思います。
実例をいうと、ランメニューばかりしていると筋力は低下、もしくは抑制されるだけでなく、短距離の走力も低下します。
中学生までは身体の成長にあわせて筋肉が増えるので、どちらでも走力はあがりますが、高校生あたりからはトレーニングの理論があてはまってくるようになるので、しっかりと考えてトレーニングしたほうがいいです。
ペナルティつけるようなランメニューとか、自己満でしかないので今すぐやめましょう。夏負けますよ?戦う相手の高校はしっかりと理論を考え、モチベーションを保ち、リカバリーまで徹底しているのが前提なのに、オーバートレーニングしている余裕はないですからね。
一旦まとめ
筋トレは平均以上の筋力を獲得するためにした方がいい。
パフォーマンス向上につながるように、速度を意識したトレーニングをオフシーズン後には行いたい。
ランメニューは短距離を中心に、8:2くらいの割合で長距離をいれるとよい。
今日はこのくらいでしょうか。
もちろん異論はあります。ランメニューを長距離ばかりしていて勝てるところもあります。そういうところは案外自主練の時間が長い学校だったりしますけどね。(回復する時間がある)
野球をうまくなりたくて研究し、トレーナーになった僕からすると、高校野球のトレーナーはCSCSか、本当にトレーニングのことを考えてくれるトレーナーが高校に行くべきだと思います。
あまり「べき」などと言い切ることはしないのですが、これに関しては言い切りましょう。
また機会があれば書きますので、その時はぜひ一読お願いします。