身体を透明化させる

身体の透明化という感覚

結局のところ私がやりたいことは「無駄なく力を伝える」という一点に尽きます。そのためには、目的以外に働いている力をできる限り排除しなければなりません。単にその場にとどまるための力や、バランスを取るための余計な力さえも邪魔になるのです。

こうした思考の延長で、これまで「纏い」や「逆末端」といった感覚を言語化してきましたが、今のところ最も有効だと感じているのが「身体を透明化する」という発想です。少し奇妙に聞こえるかもしれませんが、研究の過程としてそのまま書き残しておきます。

身体の透明化とは、すべての存在は粒子や量子のような微細な粒でできているという考え方に基づき、自分の身体をエネルギーや重さ、空間の流れが通り抜けることを許すように扱うことです。突きを出すときや短距離走でスタートを切るとき、多くの人は無意識に抵抗感を覚えるものです。前に進みたいのにどこかで引っかかるような感覚がある。そんなとき、自分の前の空間に満ちている酸素や窒素が目には見えないながらも確かに存在していると意識し、それらが自分の身体をすり抜けていくようにイメージしながら腕を伸ばしたり足を出したりしてみる。最初は手足の一部で構いませんが、徐々に全身へ、さらには意識そのものまで透過させるようにすると、抵抗感のない不思議な動きが生まれます。

実際にこの感覚をもとに抜刀やスイングを行ってみると、動作の中で「認知の速度に身体が追いつかない」という違和感が消え、かなり滑らかで淀みのない動きに変化しました。さらに対人でも検証しました。高校生に協力してもらい、合気上げや押し合いを試したのですが、抵抗される前に自然とこちらの動きが通ってしまう感覚がありました。受け手の感想も「起こりと動作が同時に来る」「反応する前に押されている」といったもので、透明化のイメージがそのまま結果に表れたと考えています。最終的には協力してくれた高校生自身も同じ感覚を体得し、技を受ける側から使う側へと移行できていました。

こうした体験から、私はこの感覚に「身体の透明化」という名前を与えることにしました。特定の部位に力を入れてしまえば途端に壁ができるため、透明化を実現するにはリラックスや脱力を丁寧に積み重ねることが重要だと思います。まだ研究の途中ではありますが、この発想を試してみれば誰でも「抵抗のない動き」に出会えるのではないでしょうか。自分の体を透明にするつもりで動いてみると、新しい発見があるはずです。