トレーニングの基本を身体の使い方として見る
トレーニングの基本といっても、理論・構造・前提によって解釈は多様です。
ここでお伝えしたい「基本」とは、特定の前提を持った身体の使い方を意味します。
たとえばベンチプレス、スクワット、ジャンプといった動作も、「ある身体の使い方」を前提にした上でフォームやプログラムを設計するべきという立場です。
前提となる身体の使い方:「支点を体外に持つ筋出力」
この前提となる使い方を、私は「支点を体外に持った筋出力」と呼んでいます。
もっと適した言葉があれば良いのですが、現時点ではこの表現を用いたいと思います。
■「支点が体外にある」とは?
これを理解するには、まず「支点が体内にある」状態を見てみましょう。
試しに腕を上げてみてください。
何も意識せず動かすと、支点は肩になります。
その状態で他人に腕を軽く押さえられると、肩に力が入るのが分かるはずです。
つまり「肩を支点として腕を動かしている」状態です。
すべての筋肉が“つながっている”状態
現実の動作ではどうでしょうか。
重さを持つ、相手と接触する、物体を操作する——こうした場面で理想的なのは、全身の筋肉や構造が一体となって目的の動作に関与する状態です。
たとえばボールを投げるとき、肩を支点にしてしまうと、肩から先しか力を伝えられません。
一方で、大地を支点にして身体全体を“力の通り道”とすることができれば、遥かに多くの筋や構造を動員でき、出力も増します。
武道などでは、これを「重さを使う」と表現することがあります。
重力と質量を活かす身体操作
水中や無重力空間で大きな物体を動かすことを想像してみてください。
そのとき、自分が反対方向に飛ばされないように押すためには、自身の質量や慣性を相手に移すような使い方になります。
これに重力が加わる地上では、基本的に「大地に力を通し、大地から力をもらう」という構造が最も効率的です。
私はこのような使い方を「質の高い動き」と呼んでいます。
分かりやすく言えば、それは「使える動き」か「使えない動き」かという区別です。
「使えない筋肉」ではなく「使えない動き」
よく「使える筋肉・使えない筋肉」という議論がありますが、私はこれは筋肉の問題ではなく、動きの質の問題だと考えています。
ウェイトトレーニングであっても、「使える動き」で行えば、それは身体を強くするための非常に有効な手段になります。
フォームやセット数の議論は、この「力の前提となる身体の使い方」があって初めて意味を持つのです。
【体感実験】支点を体外に持つ感覚を掴む
実際に体験してみましょう。
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まずリラックスして普通に立ちます。
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次に、立つために使っている筋肉や構造を「最低限」に絞っていきましょう。
できるだけ力を抜いて、ふらふらしてもOKです。
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上手く力が抜けていると、重力を身体で感じることができるようになります。
(人によって「点」「線」「面」などの感覚になります)
その重力を感じたまま、前後・左右・回転などふらふらと動いてみてください。
遊ぶように動いていると、足裏に新しい感覚が出てきます。
その“足裏からの力”を使って、腕を挙げてみてください。
- 腕に力を入れなくてもスッと挙がる
- 力感がないのに、頭上まで自然に上がっている
このとき、腕も肩もぶつからず、全身がつながっているように動いているなら、それが「支点が体外にある」状態です。
経験から見えてきた理想の動き
私自身、がむしゃらに練習をしていた頃から感じていることですが、「力感」は動作を阻害する要素でもあります。(昔は力こそ正義と思ってました)
たとえば野球のバットやボールを使うとき、「打つ前」と「インパクトの時」では身体の位置が違うにもかかわらず、打つ前の位置だけを基準にして力を出そうとしてしまいます。
剣の世界では「振っている途中、どの位置でも切れるように振れ」と言われます。
バットや拳も同様で、動き出す前の支点が固定されていると、加速が奪われます。
理想的には、動きに合わせて常に支点が変化し続けること。
止まらない・ぶつからない、つまり流れるように動く身体こそが、今のところ私の考える「理想の動き」です。
日常・トレーニング・競技に応用する
この「理想の動き」を維持したまま、
- ウェイトトレーニング
- 技術練習
- 日常の動作
を行うことができれば、以下のような効果が見込めます:
- ケガのないトレーニング
- 高効率なボディメイク
- 最大効率のパフォーマンス向上
今後は、ぜひこの「前提となる身体の使い方」を土台に、
これまで学んだこと、これから学ぶことの見え方や感じ方を広げていってほしいと願っています。